年末調整2026|何が変わる?基礎控除・給与所得控除・扶養の新ルールを具体例で整理

2026年(令和8年)の年末調整は、前年と同じ数字をそのまま使うと誤りにつながりやすい年です。国税庁が2026年8月31日に公表した「令和8年分 年末調整のしかた」では、昨年と比べて変わった点として、主に基礎控除の引上げ、給与所得控除の最低保障額の引上げ、扶養親族等の所得要件の改正が示されています。

しかも、これらの主要改正は原則として2026年12月1日に施行され、2026年分の所得税に適用されます。一方、2026年11月までの毎月の給与に対する源泉徴収事務は基本的に従来どおりです。つまり、今年は「途中から毎月の手取りが大きく変わる」というより、12月の年末調整で改正後のルールを使って1年分を精算する点が重要です。

2026年12月のカレンダー、年末調整の申告書、電卓、ノート、国税庁の年末調整情報を表示したパソコンが並ぶ机
2026年の年末調整では、前年の数字を流用せず、令和8年分の申告書と改正後の控除額・所得要件を確認することが重要です。

この記事では、制度の違いを数字だけで並べるのではなく、次の架空のケースを通して「自分なら何を確認するか」を追っていきます。これは説明のための仮定であり、実在の人物の税務結果や実際の計算結果を示すものではありません。

例:会社員の佐藤さん(仮名)は2026年の給与収入が580万円。配偶者の給与収入は130万円、20歳の大学生の子はアルバイトで170万円の給与収入があるとします。生命保険料控除や住宅ローン控除など、ここで明示していない条件は考慮しません。

年末調整2026で変わることを先に一覧で確認

項目2026年分の主な変更実務で確認すること
基礎控除合計所得金額に応じて引上げ本人の見積所得から2026年分の控除額を判定
給与所得控除最低保障額が65万円から74万円へ給与収入から所得を見積もる際に新しい表を使う
扶養親族等の所得要件例:扶養親族は合計所得58万円以下から62万円以下へ家族の2026年中の収入見込みを再確認
給与だけの扶養判定扶養親族等の目安が123万円以下から136万円以下へ「103万円」「123万円」など過去年分の数字で判断しない
2026年中の源泉徴収11月までは基本的に変更なし12月の年末調整で改正後の年税額と精算
2027年以後改正後の源泉徴収税額表を使用2027年1月からの給与計算は別途新表を確認

国税庁の最新版は、国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」で確認できます。また、改正の適用時期や実務上の注意点は、国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」にまとめられています。

変更1:基礎控除が2026年分からさらに引き上げられる

基礎控除は、所得税を計算するときに本人の所得から差し引く所得控除です。2026年度税制改正では、所得税法上の基礎控除の本則部分が58万円から62万円へ引き上げられ、さらに一定の所得層には特例の加算があります。

2026年分について、居住者の主な基礎控除額は次のとおりです。

本人の合計所得金額2026年分の基礎控除額
489万円以下104万円
489万円超~655万円以下67万円
655万円超~2,350万円以下62万円
2,350万円超~2,400万円以下48万円
2,400万円超~2,450万円以下32万円
2,450万円超~2,500万円以下16万円
2,500万円超0円

詳細は、国税庁「No.1199 基礎控除」で確認できます。

架空の佐藤さんならどう見る?

給与収入580万円の場合、給与所得控除後の給与所得は単純に「580万円そのもの」ではありません。2026年分の給与所得控除を差し引いて所得金額を判定します。仮定した条件では給与所得はおおむね420万円となるため、他の所得がなければ合計所得金額は489万円以下の区分に入り、基礎控除104万円を検討することになります。

ここで大切なのは、給与収入と合計所得金額は同じではないことです。年末調整の申告書で基礎控除を判定するときに、「年収580万円だから580万円の行を見る」という考え方は誤りです。

変更2:給与所得控除の最低保障額が65万円から74万円へ

給与所得者の所得は、原則として給与収入から給与所得控除を差し引いて求めます。2026年・2027年分では、給与所得控除の最低保障額が65万円から74万円へ引き上げられました。

国税庁によると、2026年・2027年分の給与収入が220万円までの範囲では改正の影響があり、220万円を超える部分の給与所得控除額には今回の改正による変更はありません。正確な計算は、国税庁「No.1410 給与所得控除」または令和8年分の年末調整用の表を使ってください。

なぜ本人だけでなく家族の扶養判定にも効くのか

最低保障額の引上げは、低~中程度の給与収入がある配偶者や子の「合計所得金額」にも影響します。給与収入が同じでも、給与所得控除が大きくなれば給与所得は小さくなります。その結果、扶養親族、同一生計配偶者、特定親族などの所得要件に該当するケースが増える可能性があります。

年末調整2026では、本人の控除だけを見て終わらず、家族の給与収入見込みも2026年用の計算に置き換えることが実務上のポイントです。

変更3:扶養親族などの所得要件が引き上げられる

2026年分から、基礎控除や給与所得控除の見直しに合わせて、扶養親族等の所得要件も改正されます。代表的なものは次のとおりです。

区分2026年分の合計所得要件給与収入だけの場合の目安
扶養親族・同一生計配偶者など62万円以下136万円以下
特定親族62万円超~123万円以下136万円超~197万円以下
配偶者特別控除の対象となる配偶者62万円超~133万円以下136万円超~207万円以下
勤労学生89万円以下163万円以下

これらは給与以外の所得がない場合の目安です。副業、事業所得、雑所得、譲渡所得などがある場合は、給与収入だけで判定できません。国税庁の一次資料は、「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」です。

配偶者の給与が130万円なら?

架空例の配偶者は給与収入130万円です。給与所得控除74万円を差し引くと、給与所得は56万円となります。他に所得がないという仮定なら62万円以下となるため、同一生計配偶者の所得要件を満たす可能性があります。

ただし、配偶者控除を実際に受けられるか、控除額がいくらかは、本人の合計所得金額、配偶者との生計関係、年齢、事業専従者に該当しないことなど他の要件も確認する必要があります。給与額だけで「必ず38万円控除」と決めつけないでください。

20歳の子がアルバイトで170万円なら?

架空例の20歳の子は給与収入170万円です。給与所得控除74万円を前提にすると、給与所得は96万円です。これは62万円を超えるため通常の特定扶養親族の所得要件から外れますが、年齢など他の要件を満たせば特定親族特別控除の対象になる可能性があります。

2026年分の特定親族特別控除では、特定親族の合計所得金額が95万円超100万円以下の場合、控除額は41万円です。したがって、例の96万円なら41万円の区分を検討します。実際の申告では年間の最終的な所得見込みで判定してください。制度の詳細は、国税庁「No.1177 特定親族特別控除」で確認できます。

「扶養の壁」は一つの数字ではなくなっている

2026年の年末調整で注意したいのは、「年収○万円を超えたら全部だめ」という覚え方です。所得税の扶養控除、配偶者控除・配偶者特別控除、特定親族特別控除にはそれぞれ別の所得要件があります。さらに社会保険の扶養認定は税法とは別制度です。

そのため、たとえば「給与収入136万円を超えた」というだけで、家族に関するすべての控除が消えるとは限りません。19歳以上23歳未満の親族であれば、特定親族特別控除が段階的に適用される可能性があります。一方、健康保険の被扶養者認定については勤務先や加入している健康保険の基準を別途確認する必要があります。

2026年11月までは源泉徴収が変わらない点に注意

今回の改正で少し分かりにくいのが適用時期です。国税庁は、基礎控除の引上げ、給与所得控除の最低保障額の引上げ、扶養親族等の所得要件の改正について、原則2026年12月1日に施行し、2026年分以後の所得税に適用するとしています。

ただし、2026年11月までの給与の源泉徴収事務には変更がありません。2026年12月に行う年末調整で、改正後の基礎控除額と「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」を使って1年間の税額を計算し、それまで改正前の源泉徴収税額表で徴収してきた税額と精算します。

したがって、改正によって年税額が下がる人でも、1~11月に毎月の源泉所得税が先回りして減るわけではありません。結果として12月の年末調整で還付が増えるケースはあり得ますが、還付額は給与額、扶養、保険料控除、住宅ローン控除など個人ごとの条件で異なるため、一律の金額では説明できません。

2027年1月からは源泉徴収税額表も変わる

2026年の年末調整と、2027年1月以後の毎月の源泉徴収は分けて考える必要があります。改正後の「源泉徴収税額表」は2027年1月1日以後に支払う給与から使用します。

給与担当者や事業者は、2026年12月の年末調整だけ更新して終わりではなく、2027年最初の給与計算から使用する税額表も切り替える必要があります。国税庁はすでに令和9年分 源泉徴収税額表を公開しています。

2026年分の申告書は何を見直す?

年末調整では、会社から渡される申告書の名称が多く、改正点がどこに効くのか分かりにくいことがあります。最低限、次の項目は前年のコピーではなく2026年の状況で見直してください。

  • 基礎控除申告書:本人の2026年の合計所得金額の見積額と、改正後の基礎控除額を確認する。
  • 配偶者控除等申告書:配偶者の給与収入だけでなく、改正後の給与所得控除を反映した合計所得金額を確認する。
  • 特定親族特別控除申告書:19歳以上23歳未満の親族の2026年の所得を確認し、該当する控除額を判定する。
  • 扶養控除等(異動)申告書:所得要件の改正によって新たに扶養控除等の対象になる親族がいないか再確認する。
  • 保険料控除・住宅ローン控除:今回の主要改正とは別に、従来どおり必要な証明書や適用要件を確認する。

国税庁は、改正によって新たに扶養控除等の対象となる親族を扶養控除等申告書に記載する場合、「異動月日及び事由」欄に「令和8年12月1日 改正」などと記載する例を示しています。

12月1日前に会社へ申告書を出してもよい?

制度の施行日は12月1日ですが、会社の年末調整実務は11月から始まることが珍しくありません。国税庁のQ&Aでは、実務上年末調整に間に合わない可能性があるため、改正を反映した令和8年分の年末調整関係書類を12月1日前から提出する運用でも差し支えないとしています。

従業員側は、「まだ施行前だから古い数字で書く」という対応ではなく、会社から指定された令和8年分の様式・案内に従うのが基本です。国税庁の令和8年分の様式は、給与所得者の基礎控除・配偶者控除等・特定親族特別控除・所得金額調整控除の申告ページで確認できます。

年の途中で退職・出国した人は適用時期を特に確認

すべての2026年分給与所得者が、自動的に12月の年末調整で新しい控除を受けられるとは限りません。国税庁は、2026年中に死亡退職した人や、海外転勤などで非居住者となり、居住者として最後の給与が2026年11月30日以前だった場合など、12月1日以後に年末調整を行わないケースでは改正後の控除等がその年末調整に適用されない場合があると説明しています。

その場合、改正後の控除等の適用を受けるために確定申告等が必要になることがあります。該当する人は通常の年末調整の記事だけで判断せず、国税庁の令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&Aで適用時期を確認してください。

佐藤さんのケースで最終チェック

架空の佐藤さん一家に戻ると、年末調整で見る順序は次のようになります。

  1. 本人の給与収入580万円から2026年分の給与所得を見積もる。
  2. 本人の合計所得金額が489万円以下なら、基礎控除104万円の対象になるか確認する。
  3. 配偶者の給与130万円について、74万円の給与所得控除を反映して合計所得を確認する。
  4. 20歳の子の給与170万円について、特定扶養親族ではなく特定親族特別控除の対象にならないか確認する。
  5. 生命保険料、地震保険料、住宅ローンなど、家族の扶養判定とは別の控除を追加で確認する。
  6. 会社が指定する令和8年分の申告書に、最終的な年間見積額を記入して提出する。

この例では制度の影響を理解しやすくするため条件を単純化しています。実際には給与以外の所得、配偶者本人の所得、年齢判定、国外居住親族、障害者控除、所得金額調整控除などで結果が変わります。

年末調整2026のチェックリスト

  • 令和7年分の控除額や前年の入力内容をそのままコピーしていないか。
  • 本人の基礎控除を2026年分の合計所得金額で判定したか。
  • 給与所得控除の最低保障額74万円を反映したか。
  • 家族の給与収入を「所得金額」に換算して扶養判定したか。
  • 扶養親族等の所得要件62万円、給与のみなら136万円という2026年の基準を確認したか。
  • 19歳以上23歳未満の親族について特定親族特別控除を見落としていないか。
  • 12月の年末調整と、2027年1月からの源泉徴収税額表を混同していないか。
  • 途中退職・海外転勤など特殊なケースは確定申告が必要にならないか確認したか。

まとめ:2026年は「前年の数字を使わない」が第一歩

年末調整2026で最も重要なのは、基礎控除だけが変わるのではなく、給与所得控除と扶養判定の所得要件まで連動して変わることです。本人の合計所得金額、配偶者や子の年間収入見込みを、令和8年分の新しい数字で確認し直す必要があります。

また、改正の中心部分は2026年12月1日施行であるため、2026年11月までは毎月の源泉徴収方法が基本的に変わらず、12月の年末調整で1年分を精算するという時間差があります。2027年1月からは改正後の源泉徴収税額表へ切り替わります。

本記事は2026年9月15日時点で公表されている国税庁・財務省の情報に基づいています。個別の税額は所得構成や各種控除で変わるため、最終的な申告では会社から配布される令和8年分の書類と国税庁の最新資料を照合してください。税務判断に迷う特殊なケースでは、所轄税務署や税理士などの専門家への確認も有効です。

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